抽象代数学(abstract algebra)
情報元
「群」、「環」、「体」の定義、および基本的な性質や例を理解することを目標とする。
群、環、体のざっくり定義
- 群
- 例えばn次元ベクトル全体の集合Vを考える。Vには加法や減法が定義される。しかし乗法、除法は定義されない。そこで"加法と減法が定義されている集合"についての一般論を考えた時、それが群と言える
それマジ?ベクトルの内積とかアダマール積で計算できるんちゃう?と思ったので考えてみた
- n次元ベクトルとは
- R:実数体(実数をすべて集めた集合)としたとき
- 実数をn個並べたもの(行列ではない、プログラミングで言うところの配列)
- n次元ベクトルの加法(そういう演算の定義がある 定義:実n次元数ベクトル空間・n次元実ベクトル空間・ベクトルの加法・スカラー乗法)
- 任意のu=(u1,u2,…,un)∈Rn と、任意のv =(v1,v2,…,vn )∈Rnに対して
- u+v=(u1,u2,…,un)+( v1,v2,…,vn )=( u1+v1, u2+v2 , …, un+vn )
- → 要は全ての要素を全部足しあげるだけ
- n次元ベクトルの減法
- 加法と逆のことをしているだけ ベクトル減法
- n次元ベクトルの乗法
- これは定義がない、正確に言うとスカラー値×ベクトルの定義はあるが→定義:実n次元数ベクトル空間・n次元実ベクトル空間・ベクトルの加法・スカラー乗法
- ベクトルの内積とかアダマール積みたいなものは、乗法ではない
- ここまでのような、何種類かの二項演算が定義された集合(正確に言えば、二項演算と集合の組)を代数系(algebraic system)とよぶ -> 定義:代数系algebraic system
- プログラミング的に言えば、群とか環とか体は(1)集合内部の要素の型を定義、(2)それらの二項演算の計算方法を定義していると言える
- n次元ベクトルに対して乗法、除法を定義するオレオレ代数系を定義してもいいのだが、それはどうも数学的に面白くない(not interesting)らしい
- 環
- n次の正方行列全体の集合Rを考えよう。Rには加法と減法が定まっているので、これは群である。しかしRには乗法も定まっている。 加法、減法、乗法の定まっているものを「環」と定める。
- n次の正方行列とは
- 定義: n次正方行列square matrix
- R:実数をすべて集めた集合(実数体)としたとき
- 実数を縦横nxnならべた行列
- n次の正方行列の加法、減法、乗法
- 実行列の加法・スカラー乗法 を参照
- 体
- 有理数全体、実数全体、複素数全体などのように除法も考えられるものを「体」と定める。
まとめ
代数的構造の定義\演算 | 加法 | 減法 | 乗法 | 除法 |
---|---|---|---|---|
「群(group)」 | ○ | ○ | ☓ | ☓ |
「環(ring)」 | ○ | ○ | ○ | ☓ |
「体(field)」 | ○ | ○ | ○ | ○ |
写像
AとBを集合とする。Aの元を一つを定めるとBの元が一つ定まるとする。このときこの対応を写像(map)といいA→Bなどと書く。写像に名前、例えばf、を付けたいときにはf:A→Bなどと書く。
写像f:A→Bについて、Aをfの定義域(domain)、Bをfの値域(range)という。
プログラミング言語のmapとだいたい同じですね
写像f:A→Bが単射(injection)であるとは、「a≠a′ならばf(a)≠f(a′)」が成り立つこととする。
写像f:A→Bが全射(surjection)であるとは、f(A) =Bとなることである。
写像f:A→Bが全単射(bijection)であるとは、fが単射、かつ全射であることである。
これなんか実際的に意味あるんですかね…?
半群とモノイド
空でない集合Aに一つの演算(以下では乗法とする)が定義されていて、結合法則(ab)c=a(bc)を満たすとする。このときAを半群(semigroup)という。
半群Aにおいて交換法則ab=baが成り立つとき、Aを可換半群という。可換半群においては、n個の元の積は、元の順番、演算の順番をどの様に変えても、その結果は変わらない。
半群Aの元eで、任意のa∈Aに対してae=ea=aとなるものが存在するとき、このeをAの単位元(identity element)という1。単位元が存在する半群をモノイド(monoid)という。
群
すべての元が正則元であるモノイドを群(group)という。
すなわち、演算の定義された集合Gで
(G1) [結合法則]任意のa,b,c∈Gについてa(bc) = (ab)cである。
(G2) [単位元の存在]あるe∈Gが存在して、任意のa∈Gに対してea=ae=aである。(このときeを1Gとも書く。)
(G3) [逆元の存在]任意のa∈Gに対して、あるb∈Gが存在してab=ba=eである。(このときのbをa^-1と書く)
がすべて成り立つときGを群という。群は半群やモノイドの特別なものであるから、それらに対して成り立つことはすべて成り立つ。群Gにおいて、更に
(G4) [交換法則]任意のa,b∈Gについてab=baである。
が成り立つときGをアーベル群(abelian group)、または可換群(commutative group)という。
なんか全然具体的にイメージできないのだが、やっとアーベル群がでてきた